ジェイ・ルービン

よい文学とは、僕に言わせれば、日常生活に響くものです。ごく当たり前の日常生活―――買い物をしていても、車を運転していても、料理をしていても――何をしていても、ふと微妙な関係で瞬間的に頭をよぎるものです。すべての生活に関わりを持っている。 村上さんの作品は、僕のいう「よい文学」の条件をパーフェクトに満たしています。とはいっても、僕が村上さんから具体的に何か教訓のようなものを得たか、それはよくわかりません。 ただ、はっきり言えるのは、もし僕が村上春樹という作家を知らずにいたら、まったく違う人生を送っていただろうし、このインタビューを受けることもなかっただろうということです。 もっと言えば、村上さんを知らずにいたら、今とは異なる頭脳構造を持っていただろうとさえ言ってよいと思います。もちろん仕事もまったく違うものになっていたでしょう。 村上さんを翻訳したおかげで、新しい経験を持つことができました。